Sermon法 話

カレイが4匹で


年末に餅つきをする時、29日は「苦を搗く」と言って避けなさいと言われます。しかし、29を「福」と読めば「福を搗く」で誠にめでたくなります。ですので、実際に29日に餅つきをするところもあるそうです。同じ日が読み方によって悪い日にもなり良い日にもなるのでは、それは真実ではないということになります。

病院では避けられる4と9の数字ですが、49号室を「死苦」と読めば確かに縁起でもないですね。でも、「良く」と読めば早く良くなるいい部屋に早変わりです。

とんちで有名な一休さんのところに一人の若者が訪ねてきました。「私の父は縁起を担いで困るのです。『し』の字が嫌いで、私たちが『し』の字を使うのも嫌がるので不便でなりません。どうか直していただけないでしょうか。」と言うので、早速その父親のところに参ります。途中で魚屋があったので、カレイを4匹買ってお土産にしました。
家に着いて、息子がお土産をいただいたとカレイを父親に渡すと、「こんな縁起の悪い土産があるか!カレイが4匹で『しかれ』ではないか!」と怒ります。すると一休さんが「何事も『良かれ』と思って持ってきたのですが、お気に召さぬようですので持って帰ります。」と言いますと、父親は「良かれと思って持ってきてくださったのですか。失礼をしました。それではいただきます。」と謝りました。一休さんは「何事もものは取りようで良くも悪くもなるのですよ。何事も良かれと思いなさい。そうするとすべてが良くなっていくのですよ」と諭しました。(安藤英雄男著「一休」より抜粋)

ちゃんとした理由があることには従うべきですが、単なる語呂合わせや迷信に振り回されて、気にしたり悪いと思い込むのは全く無駄なことです。無駄どころか、悪い方にばかり取っていたら本当にそのようになってしまいかねません。ものは取りよう、どうせなら良いように取りたいですね。

(福井新聞「心のしおり」欄に掲載分を手直ししたものです)


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