Sermon法 話

恨みを捨ててこそ


「恩は石に刻め、恨みは 水に流せ」という言葉があります。
と言われても実行するのはなかなか難しいものですね。
反対に「恨みをしっかり石に刻んで、恩はすっかり水に流す」人もいるかもしれません。

お釈迦様は、「恨みに報いるに恨みをもってすれば 恨みはついに収まらず。恨みを捨ててこそ止む」とおっしゃっています。実はこのお言葉に日本は救われたのです。

第二次世界大戦の後、1951年にサンフランシスコ講和会議が開かれ、日本の戦後賠償が話し合われました。ソ連を中心に「今この段階で日本に平和を与えるべきではない」「南北に分割して統治すべき」との意見が出される中、セイロン(現スリランカ)代表として参加したジャヤワルダナ蔵相 (後に第二代大統領に就任)は、先のお釈迦様のお言葉を引用して、日本に対する 賠償請求を放棄する、アジアの将来にとって完全に独立した自由な日本が必要であるという演説を行い、アジア諸国の賛同を得ました。

この結果、日本は分割統治されずに済んだのです。もし分割統治されていたら現在の北朝鮮と韓国のように同じ民族で体制の違う二つの国になっていたかもしれません。その危機を救ってくださったのがジャヤワルダナさんであり、お釈迦様の「恨みに報いるに恨みをもってすれば恨みはついに収まらず。恨みを捨ててこそ止む」という教えだったのです。

恨みを相続し続けていればそれが新たな恨みを生み、いつまでたっても争いは無くなりません。戦争はしてはいけないと誰もが思っているはずなのに。

ジャヤワルダナさんは何度も来日された親日家で、亡くなった時には「右目はスリランカ人に、左目は日本人に提供してほしい」との遺言によって左目の角膜は日本人に提供されたそうです。
お釈迦様のお言葉と、日本にとっての恩人であるスリランカ第二代大統領ジャヤワルダナさんの名前は心に深く刻んでおきたいですね。

(福井新聞「心のしおり」欄に掲載分を手直ししたものです)


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