Sermon法 話

豆腐は偉い!


豆腐は偉い!

俳人荻原井泉水さんの随筆に「豆腐菩薩」というのがあります。豆腐をひたすらほめたたえるエッセイです。これがなかなか味わい深いので、簡潔にまとめてご紹介しましょう。

〇豆腐の偉いところ

その一 豆腐自身の味は淡白で他の素材と比べたら味がないと言ってもいいくらいである。それだからこそ豆腐は相手を選ばない。どの料理の中に入っても他の具材と調和する。豆腐は寛容に己を空しゅうしてゆき、結局は相手を生かすと共に己れをも活かすのである。つまり我欲が無いのだ。自然とこういう境地に到達している豆腐は偉い。

その二 一見見たところは四角四面の仏頂面をしているが、頑固で融通が利かないわけではない。柔らかいことは申し分なく、しかも身を持ち崩さないだけの締まりを持っている。料理される時にどんなに切られようとも少しも本来の面目を失わない。このような自由自在な働きを持つ豆腐は偉い。

その三 湯豆腐から冷奴、油揚げ、凍り豆腐、炒り豆腐等々に到るまで、豆腐が種々の姿にその身を変じて我々の生命に供養してくれることは観音菩薩が三十三に身を変じて我々の救いとなり給う、その広大無辺な功徳を思わせるものである。「豆腐菩薩」として合掌すべきものである。

その四 豆腐は生まれながらにしてこの徳を身に付けたのではない。豆腐は本来ただの豆に過ぎない。それが重い石臼に挽かれて苦労してきたのだ。文字通り粉骨砕身である。その苦労が終わると、細かい袋の目をくぐって出るのにまた一苦労だ。このような難行苦行を経て大成したのが豆腐だから、悟りの境涯に到っているのも偶然のことではない。

いかがでしょう?豆腐ってこんなにも学ぶべきことの多い偉い食べ物だったのですね。

(福井新聞「心のしおり」欄に掲載分を手直ししたものです)


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