Sermon法 話

世界遺産20周年

令和7年となりました。昨年の今年の漢字は「金」でしたが、個人的には元日早々の能登の大地震から始まり、8月には南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されたこともあり、「震」だなと思いました。

気候が極端な方向に振れて行っているのは誰しもが感じていることだと思います。春と秋がだんだんと短くなって緩やかな季節の移り変わりが無くなっていく感じで、そのうち四季から二季になってしまうという人もいます。

昨年は平成16年に紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産になって20周年の記念の年でもありました。紀伊山地の霊場とは高野山、熊野三山、吉野・大峯という三つの霊場です。高野山は真言密教、熊野は神道、吉野・大峰は修験道という異なる宗教の聖地がこの地域に共存しています。しかもそれらが参詣道などの古道で結ばれ、参詣する人々が宗教の違いにかかわらず、自由に行き来することができます。点在するのではなく、線で結ばれているので参詣道が合わせて世界遺産に登録されたのです。このようなことは世界を見渡しても日本以外にはないそうです。エルサレムはキリスト教とユダヤ教とイスラム教の聖地ですが、紀伊山地の霊場のような自由さはありません。

このことは、日本人の宗教に対する寛容性と紀伊山地という場・自然が霊性を感じさせる特別な場所であることを示しています。だからこそ、四国や近畿地方の山々を修行して回った弘法大師様が選ばれた、というよりも神仏から与えられたのが紀伊山地の高野山でした。

ハロウィンで仮装し、クリスマスを祝い、除夜の鐘を撞きにお寺に参り、神社に初詣に行く日本人を外国人は不思議に思います。無宗教で節操がないとも言えますが、異なったものを受け入れる寛容性を示しているとも言えます。同じ宗教の中で宗派の違いによって血を流しているところもあることを考えると、最近は日本人のこの緩さが逆にいいのではないかと思っています。

争いが収まり穏やかな一年となりますように。


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