Sermon法 話

お薬師様の脇仏様は


仏様にはサポート役の脇仏様がいらっしゃる場合が多いです。これは仏様もお一人では十分にお働きになれないことを表しています。例えば、お釈迦様なら文殊菩薩と普賢菩薩、阿弥陀様なら観音菩薩と勢至菩薩が脇仏様です。
では薬師如来様はどなたでしょう?日光菩薩と月光(がっこう)菩薩、すなわち太陽と月です。お薬師様は衆生の病苦を救い、災いを除き、衣食を満足させるというので信仰を集めてきました。

聖武天皇は奈良の都に東大寺を建て、諸国に国分寺と国分尼寺を建てました。教義上は国分寺の本尊はお釈迦様が理にかなっているのですが、現在各地に残っている国分寺の本尊は圧倒的にお薬師様が多いです。為政者にとって困ることは、疫病がはやり、飢饉になり、天変地異が起こること。先のお薬師様の御利益を見ると、国の安泰のためにはお薬師様の方が適しているということなのでしょう。

では、お薬師様の脇仏様はなぜ日光・月光菩薩なのでしょう。私たちが健康に災いなく平穏に過ごせるためには陰陽のバランスが大切です。太陽は陽で月は陰です。生命が存在できるのは太陽のおかげですが、ずっと照りっぱなしでは灼熱の世界で生きていけません。昼と夜がいい具合に巡るので生きていけます。こうやってうまい具合に行っているのには実は月の役割が大きいのです。地球と月は引力で引きあっていて、干潮満潮が起こります。月が無かったら地球は一日8時間で回転し、地表も海も大荒れになります。地球は23.4度の傾きで安定していますが、月のおかげで傾きを一定に保てるのです。月が無いと地球の自転軸が不規則に変化して、大規模な気候変動が起こります。惑星と衛星がこれだけ影響を与え合っているのは太陽系では地球と月だけだそうで、そう考えると月は太陽と同じくらい大切な存在と言えます。

日光・月光菩薩はお薬師様の脇仏様としてまさにぴったりなのです。

(福井新聞「心のしおり」欄に掲載されたものです)


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