Sermon法 話

今年のハグロトンボ

例年7月に入ると寺の庭に出てくる羽が真っ黒なハグロトンボですが、今年も7月12日に庭にいるのを確認しました。うれしくて「今年も出てきてくれたんか、ありがとー」と思わず声を掛けました。毎日注意して見ていましたら4匹は確認できました。

それが8月に入ると姿が見えなくなりました。いつもは8月末頃まではいるのに、おかしいなと思っていると、本堂の北側に一匹だけ見つけました。今年は猛暑日が続いていたので、南側の庭では暑すぎて直射日光が当たらない北側に移動したのかな、一匹しかいないのはどうしたのかな、と心配になっていました。その後も姿を見かけたのは一匹だけでした。

8月20日は一年に一度の水子救苦観世音菩薩様の大祭でした。私はお不動様の前の護摩壇で護摩を焚きました。お不動様は本堂南側にお祀りしてあり、庭に面しています。護摩の火が上がる前に、お不動様をはじめとする諸尊の御真言をお唱えします。お不動様の御真言をお唱えするのが終盤にかかったころ、ふと目をやると護摩壇の右側の床にハグロトンボが一匹止まっているではないですか。換気のために窓を開けていたので入ってきたのでしょうが、これまでは窓を開けていても入ってきたことは一度もありませんでしたし、人がいるすぐそばに長く止まっているのが不思議でした。

ハグロトンボは止まっているときに、羽をゆっくり水平になるまで広げていって、パタンと閉じるという動作を繰り返します。それが合掌する姿に見えるというので合掌トンボとも言われます。

入ってきたハグロトンボはちゃんとお不動様の方を向いて止まっていて、いつも見るよりも早いペースで羽の開閉を繰り返しています。まるで私が御真言を唱えるのに合わせて一生懸命拝んでいるようでした。止まっていたのは2~3分程でしょうか、開けてある窓から外に出ていきました。

ずっと気にかけていたので、最後に挨拶に来て一緒に拝んでくれたのか、また、ハグロトンボは7月から8月のお盆の時期に出てくるので、先祖様がハグロトンボの姿になって戻ってくるという考え方もあります。なので、亡き母がお参りに来たよと知らせてくれたのかななどと想像して、猛暑でしたが、あったかーい気持ちで護摩を焚くことができました。


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