Sermon法 話

お辞儀の文化


ゴルフの松山英樹選手が4月のマスターズで優勝したニュースはコロナ禍の日本に明るい話題を提供してくれました。

松山選手は愛媛県の松山市出身で、大学は仙台の東北福祉大に進学しました。初めてマスターズの切符を手にしたのが在学中の2011年のこと。マスターズは4月ですが、その前月、3月に東日本大震災が起きました。地元が震災で大変なことになっているのにマスターズに出ていいものかと悩みましたが、回りの後押しもあり出場を決意、アマチュア選手最高成績のタイトルを獲得しました。震災と初出場から10年目の節目の年に優勝というのも時の巡り合わせを感じます。

優勝した瞬間、実況席の3人が涙涙で声が出ず、55秒間の沈黙があったことも感動的でしたが、現地アメリカのメディアが取り上げたのが、キャディーの早藤さんが、優勝した後にコースに向かって帽子を取って一礼したシーンでした。そのシーンが紹介されると、「日本人はとても威厳があり、敬意を表する人々だ」、「名誉と尊厳は日本文化に根付いている」、「アメリカ人ではこの礼儀を理解できないだろう」などの声が上がりました。日本人として誇らしい気持ちになりますね。

早藤さんによると、普段からコースに向かってお辞儀をしているわけではなく、今回はただありがとうございますという気持ちが自然と出たそうです。選手ではなくキャディーさんがお辞儀をしたというのも注目された点でした。
以前は日本人はペコペコお辞儀をし過ぎるなんて言われたこともありましたが、このような取り上げられ方を見ると、最近は日本の文化として評価されているようですね。

武道では「礼に始まり礼に終わる」と言われますし、野球選手でも試合前と試合後にグランドに一礼する選手は多いです。大相撲では現立田川親方の豊真将関が勝っても負けても深々と礼をする姿がすがすがしく、大好きな力士でした。相手に対する敬意、土俵という場に対しての感謝の念が深い一礼という行為に表れ、その行為を見た人にもいい影響を与えます。

「心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる」という言葉があります。早藤さんの「ありがとう」の心がお辞儀という行動に表れ、その行動が世界中に紹介された結果、普段は縁の下の力持ちの存在であるキャディーさんが注目を浴び称賛された。まさにお辞儀によって運命が変わったと言えるでしょうね。


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