Sermon法 話

思いを言葉にすること


「介護短歌」というのがあります。介護する方、される方が介護生活の中で感じる様々な思いを短歌に詠むもので、NHKの番組で紹介され反響を呼びました。

辛さ、痛み、苦しみなどの思いを言葉に表すことによって気持ちが整理され客観化されます。そして自分の思いを他人と共有することができます。

東北の新聞社、河北新報の川柳コーナーの選者が言われるには、東日本大震災の後、川柳の投句が増えたそうです。川柳は「詠む」ものでもあり「吐く」ものでもあるから、川柳を作ることによって自分の気持ちを吐き出すことになるのです。「川柳を作ることによって一歩前に進めた」と添え書きに書いてあったこともあるそうです。

私たち高野山足湯隊が最初に足湯ボランティアをした南三陸町の旭ヶ丘コミュニティーセンターでは、当時の柴田区長さんが「南三陸町は壊滅状態だけれども、凄惨な体験をいつまでも引きずっていても仕方がありません。いっそのこと川柳を作り、この苦境を笑い飛ばしてみてはどうかと思いました。」と、震災翌月の4月10日に地区の住民に呼びかけて川柳の募集を始め、翌11日から夕方4時の支援物資の配布時に発表を始めました。

「大津波 みんな流して ばかやろう」
「電気来る心も家も 灯がともる」
「高台で 海を見るたび 辛くなる」
「災害が 冷えた夫婦の よりもどす」
「ノーメイク テレビに映り 気づかれず」 (いずれも「震災川柳」より)

様々な思いを五七五に乗せることにより、気持ちを吐き出し整理し、時にはユーモアにまで転換し、それを発表することにより皆でその思いを共有することができたのです。
川柳が地域の絆を深める役割を果たしました。

(福井新聞「心のしおり」欄に掲載分を手直ししたものです)


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