Sermon法 話

三密


新型コロナウイルスに感染しないため注意すべきこととして「3密」ということが言われています。すなわち、「換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、近距離で会話や発声をする密接場面」の3つの「密」を避けましょうということですね。

感染を広げないために、とにかく人と人が接触しないことが求められています。美しき調和の令和が始まった途端に、行き来を制限したり人と関わらないようにさせられたりする状態になるというのは、私たちの在り方が問われている気がします。

3(三)密というと真言宗の僧侶は別のことを思い浮かべます。身密(しんみつ)と口密(くみつ)と意密(いみつ)の三密です。仏様のからだと言葉と心の三つのお働きのことを言い、それらは私たちの思いの及ばないものなので「密」と言います。

仏教では私たちのからだと言葉と心の三つの行いを三業(さんごう)と言います。凡夫(ぼんぶ)の行いは煩悩に覆われているので悪い業を作りがちです。その行いによって苦しみの元を作っています。ですからお勤めの始めにを懺悔文(さんげもん)お唱えして、身と口と心とに作るところのもろもろの罪とがを懺悔してからお経を唱え始めます。けれども密教では、私たちは等しく仏の心を持っているので、本性としては私たちの行いも仏の行いと同じ三密と捉えます。

私たちは何か大きな危機に直面した時に仏の心が目覚めます。阪神淡路大震災の年は多くの人がボランティアに駆け付けたのでボランティア元年と呼ばれ、東日本大震災の時には世界中から支援が寄せられました。今回の危機で私たちに求められているのは、自分勝手な行動をするのではなく他の人のため社会のためを考え3密を避ける行動をすることです。

主語を「私」から全体のことを考える「私たち」に変えて行動する、これが三業から仏の行いである三密への行動変容なのです。

(福井新聞「心のしおり」欄に掲載分を手直ししたものです)


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